未来とひきかえに…

「なあ、デヴィッド。わたしたちのどちらかが後悔するようなことを言わない前に電話を切ったほうがよくないか?」

おはよう。塾生のみなさま。塾長の赤津崎(このブログでのペンネーム)こと石井一孝です。

洋楽ネタは人気ないからあまり書かないようにしてたんだけど、意外にもまずまず受け入れられているみたいなのでちょこっとは書いてもいいかな?

少し前に世界中を悲しみでいっぱいにした「ホイットニーヒューストンの死」。俺も心に大きな穴があいたような気持ちだった。『Chess』の大阪公演の時だったなあ。楽屋でそのニュースを聞いて愕然とした。

ホイットニーについて書きたいことはいっぱいあるけど、先日から肩すかしまくっている「ホイットニーの逸話」(笑)。逸話というとなんだけど….。

我らがドリー・パートンの作詞作曲した「I Will Always Love You」がホイットニーとケヴィン・コスナー主演の映画『ボディーガード』の主題歌として空前絶後のミラクルヒットを記録したのが1992年。売り上げは、驚くなかれ4200万枚!!!!!ビルボードのチャートで14週連続ナンバー1となった。これはエルヴィスプレスリーの「冷たくしないで(Don’t Be Cruel)」の11週を抜いて、史上最長ナンバー1になったんだよな(今は抜かれてます)。

みんなが共感しやすいように言い換えれば(笑)、ザベストテンで史上初の9999点を記録した西城秀樹さんの「ヤングマン」、12週連続1位をとった寺尾聡さんの「ルビーの指輪」と同じようなイメージだ。

その奇跡のヒットの裏側にこんな話がある。

音楽プロデューサーは俺の大大大好きなデヴィッド・フォスター。ケヴィンコスナーがこの曲を主題歌にとデヴィッドに持って来た曲が「I Will Always Love You」。ケヴィンの審美眼はさすがとしか言いようがない。

これを抜群のディレクションでレコーディングしたデヴィッド。あとはミックスダウンだけだ。

ミックスダウンというのは、分かりやすく言うと「お化粧」みたいなもんだ。録音しただけでは、その曲はまだ「スッピン」なんだな。

「アイラッシュを少しでも長く見せなきゃ!」とか「Tゾーンには少しハイライトを入れとこう!」とか「チークはオレンジ系にしようかな」とかいろいろしないとダメでしょ(笑)?

そんなわけで、楽曲をよく見せるために、デヴィッドは嶋田ちあきさんの如くメークアップを施したのだ。ところがアリスタレコードの総帥クライブ・デイヴィスさんが「No」を言い渡して来た。彼は「スッピン」のまま世の中に出せ!と言うのだ。

ようは価値観の問題なのだが、デヴィドとクライブは熾烈な口論を繰り返す。

最終的にクライブが電話口で冒頭の発言をする。クライブはレコード会社のボスというだけでなく、アメリカ音楽界のボスでもある。スーパーVIPなのだ。つまりもう一言言ったら、「君の未来は消えてなくなるぞ」というわけ。

そして「スッピン」のまま世の中に出た「I Will Always Love You」。デヴィッドの意に反した仕上がりだったが4200万枚。確かにそう言われて聴き直すとラフミックスのような音だが、そのナマっぽさが素晴らしい。何が良いかは本当にわからないね。

俺がデヴィッドだったら「なるほど!もう一度聴き直したらクライブさんの言う通りだと思います」と、そんなに反論せず、すぐに言っちゃうだろう(笑)。

みんなはこんなケースで、それでもなおクライブと闘えますか?未来とひきかえに….。


37 thoughts on “未来とひきかえに…

  1. ★kaoru★

    kazuさんの 大大大好きな デヴィッド・フォスターさんを 今日は 聴いてます
    (とりあえず まずは You Tubeで (・Θ・;))
    ホイットニー『Run to You』『I Have Nothing』の プロデュースも
    手掛けていたんですね~(驚)
    スティーブ・ペリーの『I Stand Alone』
    アンドレア・コアー『On My Fathers Wings』の 2曲も 綺麗なメロディ♪♪
    kazuさんが 好きな理由が 聴いてたら わかる気がします~!!

  2. うりぼう

    石井さん、こんばんは☆
    質問の答え… 闘わない。だってスーパーVIPでしょ?逆らえないですょ。でもお腹の中で、”後悔する事にならなきゃい〜ね〜”とか思ってますきっと。そして自分が頭を打つ(爆)..それが私の人生だな(爆爆爆)
    石井さん、
    人気なんか気にしないで喋りたい事をキーボード叩いてくださいよ!石井さんのブログなんだから!石井さんが御大なんですから!
    前回の様な洋楽ネタなら、洋楽音痴な私は「ワケワカラ〜ン」とか言いながらもフムフムしてましたし、もっと未知な世界も「今回はパス〜」とか言いながら「石井さんてこんな事にも詳しいんや〜」とか発見できますしね(*^-‘)b
    メイク…
    いわゆる肌色しか塗らない私のメイク(これでもメイクって言えんのか?謎)、アイラッシュって何や?嶋田ちあきサンってどなた??
    石井さん、私にモリーナ風メイクをしてくださいな?…あ、バルジャンの方が似合うかもなぁ私(^m^)
    こんな私ですが、赤津崎塾の塾生でいていいですか?(´`;

  3. ★kaoru★

    1曲が この世の中に出るのに いろんな エピソードや逸話が
    あるんですねぇ
    貴重な お話 ありがとうございます♪
    先日の 『アイ・マイ・ミー・・・mine』の原曲の音源がいいか?
    今、発売されてる ヴァージョンが いいか? 
    ・・・みたいなもんですかねぇ??
    (ちょっと違う?)
    今は 1曲でも いろんな 種類の 曲調のCDが 出てるようなものも あるけど
    その頃は ふたつに ひとつ・・的な 感じだったのでしょうか?
    すっぴんの良さも あるし お化粧した音の良さもあるだろうし・・・
    こういう話を 聴けば デヴィッド版も 聴いてみたい気がします

  4. 惠子(^_^)v

    一孝さん(≧∇≦)
    今朝もブログの更新ありがとうございます♪
    『ボディ・ガード』の裏で、こんなこわいお話があったなんて全く知らずでした!!!
    驚き(◎o◎)です!
    ミックスダウンの説明、とってもわかりやすかったです♪
    まさか、一孝さんから嶋田ちあきさんの名前が出るとは、これまた驚き(◎o◎)
    未来とひきかえに、クライブ・ディヴィスさんとは戦えないです(∋_∈)
    おとなしく返事しちゃいそう‥☆
    デイヴィッド・フォスターのCD購入しちゃいました(o^∀^o)
    驚異のスーパープロデューサ
    オリジナル全14曲♪入ってます(^_^)
    洋楽のことは、わからないことたくさんだけど、いろいろなお話 聞きたいから、また書いてくださいね☆彡彡
    赤津崎さん☆
    楽しみにしてますよん(≧∇≦)

  5. あんず

    教授こんばんは♪
    「ホイットニーの逸話」…。そんなことがあったんですねっ((((;゚Д゚))))ウヒャー
    >みんなはこんなケースで、それでもなおクライブと闘えますか?未来とひきかえに….。
    う~ん、アメリカ音楽界のボスでしょ?
    その世界で今後もやっていくなら闘いは出来るだけ避けたいですねぇ(-_-;)
    以前は後先考えずに、よく衝突してましたけど…。価値観の違いほど厄介なものはない(苦笑)
    >洋楽ネタ
    「ちょこっと」と言わずに書いてくださいませ。
    だって教授のブログです、もっと音楽ネタがあってもいいはずっ♪♪♪
    とはいえ、余りにマニアックすぎるとついてけなくなるかもなので、お手柔らかにお願いします(笑)

  6. P子

    ディープな洋楽語り。いいじゃないですか♪
    だって、情熱マニア日記。
    そこから入って、ミュージカルなんて観たことなかったという人が、ミュージカルファンになるかもですし。 逆輸入、みたいな感じで。
    どこまでもついていける優秀なコメンテーターの皆様もいらっしゃる事ですし♪
    そして、肩すかし逸話(笑)
    すごーい。そんなお話しとは!
    とってもドラマチック。手に汗握る展開ですね。
    まさに映画のワンシーンになりそうな。
    最後の押しの一歩も大切ですが、引きの一歩も、ものすごく重要な事って確かにありますね。一歩押すか、一歩引くか、その判断を誤ると………
    私も、「なるほど」鞍替作戦 でいきます(笑)
    だいたいそうしています(笑)未来のために。
    石井さんの解説がまた濃厚で面白くって。
    今度、メークアップ講座も開催して下さい(笑)

  7. ikuko

    へぇ~、音楽業界のウラではいろんな逸話があるんですね。
    デヴィッドも自分の感性を否定されて、
    黙ってはいられなかったのでしょうね。
    日本人ならボスに楯突く人はあまりいなそうですね。
    私だったら、「あっ、そうっすか。わかりました。」と引きさがって、
    売れなかったらあのオヤジのせいだと自分にいいきかせます(笑)。
    ホイットニーはデビューアルバムを良く聴いてたから
    死因を知って悲しかったです。
    でも、かずさんが嶋田ちあきさん知ってるなんて、
    そっちのほうもビックリ逸話だわ!(笑)
    それに、邦楽疎いって言ってたのに、
    ザ・ベストテンの点数やら、寺尾聰の12週連続1位も知ってるなんて、ズルいわ。
    ちなみに、私は今日休みだったので「スッピン」でした。
    これは世に出てはいけない(笑)。

  8. maki

    そう…この曲の大ヒットが、彼女の私生活に変化をもたらす一因だったそうですから、本当に複雑な心境です。

  9. サンドラ@ウォータールー

    あ、あのおっちゃん、あんなやさしそうな顔して
    そんなおっかないことを言ったのですか!!??
    それも教授の愛するデヴィッド・フォスター氏に・・・(驚愕)
    いやはやショウビズの世界はあな恐ろしや・・・
    教授、やっと吐き出してくれてありがとう!
    何やらまたこの2,3日、彼女の良からぬニュースが流れてきて
    気分下がってたろうな・・・とお察しします(かくいう、私がそうです)
    教えて下さって感謝☆です。知らなかったぁ~(^0^)

  10. maki

    そうだ!
    聴き比べるのに適した歌とか紹介してくれたら、比べてみますけど。
    「主張し過ぎない」声orギターの歌と
    「主張気味な」声orギターの歌とか。

  11. 優子o(^-^)o

    ふ~っ。
    あの名曲が生まれてくるためには こんな緊張感溢れるやりとりが 交わされていたのですね…。
    それぞれが ベストのものを目指して 譲れないところがあったのでしょうが、こんなセリフがでてくるほどまでとは…。
    このあと、デビットは深く息を吸い込み、足を踏ん張ると、きっぱりとこう言ったのですよね。
    「最初のミックスはもう存在しないんだ。」
    でもクライヴは夏の間中ずっと ポケットに入れて持ち歩いていたDATを返して、マスター盤にしてそれをレコードにさせた…。
    そしてアルバムは歴史的なヒットを記録するのだけれど…
    デビットがリミックスしたヴァージョンを 聴いてみたい気がしますよね!
    もしかすると、そっちのほうが優れていて、五千万枚を超える売上を記録したのかもしれないし…。
    今となっては、神のみぞ知る…というところでしょうか。
    赤津崎塾生は、ちょっとだけ お勉強していたのでした♪(笑)うふ。
    そうだなぁ~…私だったら、やっぱり足を踏ん張って、1度はチャレンジして(言って)みるかなぁ。。。
    で、ダメだったら、諦めがつきそうだもん!
    あとは、アッサリと引き下がりそうな気がします…。(根性なしかな…?ま、仕事では私生活よりちょっとだけオトナかも。(笑))。
    午後も 楽しんでくださいませ♪o(^-^)o

  12. maki

    相手が相手ですから、やはりここは「長いものに巻かれろ」で。
    石井さんは賢明な判断をされたと思いますよ。
    でもしかし、あの大ヒット曲が世に出る舞台裏で、そんなことが起こっていようとは…。
    しかもデヴィッドの意向ちつは違ったというのがビックリ!
    デヴィッドの肩を持ちたくなりますが、結果が結果だけに、さすが大ボスの判断は正しかったんでしょうね。
    でも…お化粧しててもヒットしてたような気もしないでも…。
    それより何より驚いたのが、ケヴィン!
    ただの俳優じゃないんですか?彼。
    何故あの曲を? しかもカントリーから。
    ドリー・パートンの歌が好きだったんでしょうか。
    歌詞に何かインスピレーションを感じたのかしら?
    大変興味深いお話を有難うございました。
    肩すかしはするけど、約束は守られますものね。
    ずいぶんじらされますけどね。
    そして石井さんが、お題にそんな風に気を使われてたなんて知りませんでした。
    オズさんというコメンターもいらっしゃることですし、遠慮せずたまには書かれてみてください。
    ついていけなくなりそうなら、言いますから。
    前回書かれてたビルラバウンティーとか、あまりポップスのチャートには出てこなくって馴染みは無いけど素敵な歌ってあるでしょう?
    ランス・ジョーさんも素敵でしたよね。
    昔スティーリー・ダンとか好きになっても、どこからどうそういった方面に進めばいいのか分からなかったりしたので
    公演の無い時なんかに、またぼちぼち素敵な曲を紹介がてら、舞台裏話とかいろいろ聞かせてください。
    ではでは♪

  13. Zoccha

    >デビ…..クライブ….そんなこ….君はなにを今 〜 見つめているの?….誰だお前は….。
    で、どうして「君はなにを今 〜 見つめているの?」なんですか???

  14. Zoccha

    クライブは経営天才的でしょうから、
    聴きなおさなくても、しっぽ振ってクライブに是非従いたいなあ~
    ポピュラーは「売れること」が目標の上の方にくるのではないですか?
    だったら、目標達成が先でしょう。
    すばらしい曲ではあるが、「芸術性でゆずれない・・」というほどの曲ではないと思う。
    クラッシックだと文化財的な意味や、歴史的音源を残す意味で、
    赤字にならなきゃ作っておこうという、オンディマンドに近いものは多いですが。
    どうしてもなら、そのうち自分の作った別バージョンを世に出せばいいんだから。
    本の出版もプロのレイアウトや校正、装丁の方が当たってることが多い・・
    ところで1年のうち363日スッピンの私には、
    >「アイラッシュを少しでも長く見せなきゃ!」とか
    「Tゾーンには少しハイライトを入れとこう!」とか
    「チークはオレンジ系にしようかな」とかいろいろしないとダメでしょ(笑)?
    ↑ 実はこの教授のコメントの意味がわからない・・情けないなあ、女として。
    化粧水、乳液、クリーム・・ハンドクリームすら持ってない!!
    何も使っていません。
    リップクリームより持ちがいいという理由で、口紅1本あるけど、色はほぼつかない。
    シャンプーだけかろうじてある。リンス?・・ない。
    ネットで「アイラッシュ」って何?「Tゾーン」って何?って検索してる・・・
    七五三以来ほぼお化粧してない・・・
    嶋田ちあきさんって?・・検索しなきゃ。
    あの~野球と格闘技なら詳しいんですけど~~~

  15. 優子o(^-^)o

    こんにちは(^0^)/♪ kazuさん!
    わかりやすい説明♪ありがとうございます♪♪♪m(._.)m
    これなら 私にもわかります((笑))
    でも、メイクの嶋田ちあきさんのくだりには ちょいとビックリ!!w(゚o゚)w
    ご自分でメイクされるから こんなに詳しいの?
    (…そこ?(-_-;))
    全部読んでから 最初の言葉に戻ると 何だか 胸がドキドキしますね…。
    どうだろう…。
    未来とひきかえに…。
    考えてみますo(^-^)o

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